2014-10-23 ― S.T.A.L.K.E.R.

当番じゃないけど、昨日のSTALKERプレイ日誌でテンションあがったので追記

 

 

外はあいにく雨が降っていた
シドロビッチのところに雨宿りに戻ろうかと思った時に、PDAを介して通信が入る
《なあ、ちょっとその近くにアーティファクトがあるみたいなんだ……回収を頼めるか》
やれやれ、人使いの巧い男だ
私はPDAで「ok」と打ち込むと、シドロビッチの言っていたゴミ捨て場に向かう
《言うまでもないだろうが、その辺はアノマリーが沸いているぜ、気をつけるこった》
実に気の回ることだ

 

 

 

アノマリーというのは、このゾーン特有の超常現象だ
噂では、チェルノブイリ原発で再び起きた大爆発によってバラ撒かれた、大量の放射性物質と「何か」が地面や水と空気とが混ざって出来たものらしい
重力に異常が起きて吸い込まれたかと思ったら、バラバラに吹き飛ばされたり、強酸でブーツと足の皮がドロドロの液体にされたり……
果ては「空間」それ自体が変質して、例えば別のどこかにテレポートさせられたりということもあるそうだ
遠回しに色々いったが、要は自然の地雷ってことだ
アノマリーを見分けるにはいくつかのコツがある……昔に見た、タルコフスキーの映画に出てくる男のように、白布をくくりつけたボルトを投げるのも手だ
もっとも、今どきのストーカーたちは大抵、ガイガーカウンターとセットのアノマリー探知機を持ち歩いているので、こんな罠にかかることは滅多にない
こんな危なっかしい代物に、わざわざ近づくのにも一応理由はある
アノマリーの近くには、アーティファクトと呼ばれる希少な鉱物のような物が落ちていることが多いからだ
アーティファクトには色々な種類があり、それは周辺のアノマリーの種類と関係があるようだが、私も詳しくは知らない

人類の科学ではまだ再現できない物質がこの世にはいくつもある
昔は「錬金術」と呼ばれたようだが、このアーティファクトにも似たような特徴が見られた
例えば、強力な放射能を宿している代わりに周囲の運動エネルギーを反比例するように減衰させる……つまり弾丸の威力を弱らせるものや、重力に作用して周囲というか持ち主の荷物を半分近くに軽量化してくれるものなどだ
それから、この放射線だらけのゾーンの中で皮肉にも、周囲の放射能を完全に除去できる奇跡のような物質まであるという
さらには、どんな傷でも癒せるという魔法のようなアーティファクトも、このゾーンには実在しているという
そうしたアーティファクトは大抵、かなりの額で取引される……特に、外の世界ではゾーンよりも遥かにアーフティファクトの価値が高まる
トレーダーたちは貸しを作ったストーカーたちに、アーティファクトを探させ、それで一儲けをする、というわけだ
ちょうど、今の私のように

トレーダーから手に入れた、PDAと連動するアノマリー探知機を片手に、私はピストルを抜いてゴミ捨て場を歩きまわった
雨足が強まりつつある中、歩いているとぼんやりとした橙色に光る石ころを見つけた
なるほど、トレーダーが欲しがっていたのはこのジェリーフィッシュか……これは微量の放射線と引換に、弾丸の威力を減衰してくれる
はっきりいって、ゾーンでは大した価値のあるものではないが、外の世界ではまだ学術的な分野で需要があるものらしい

バックパックにジェリーフィッシュを突っ込んで、シドロビッチのもとに帰ろうとした時に、ヘリの羽音がした
私は咄嗟にその場に伏せるように身を隠して、見つからないことをゾーンの神に祈る
飛んできたのは旧ソ連製のガンシップ、Mi24だ……タレットに赤外線監視装置がついていたら、このひどい雨の中でもたちどころに獲物を捉えられる
このゾーンではどんなミュータントよりも恐ろしい怪物だ
アノマリー漬けのジャケットは、よく出来たゴアテックス製の上着よりも防水性に優れていたが、ジーンズはそうもいかない
冷たい水がズボンと下着に染みこんでくる、不快な感触に耐えながら私は伏せる
ヘリはすぐ近くを旋回して、何かを攻撃しているようだ……軍のヘリはアノマリーを避けるはずだ、私は屈みながら先ほどのゴミ捨て場に戻った
そこで隠れてやり過ごしていると、やがてヘリは基地の方に引き返していった
《よお、生きてるか》
シドロビッチが問いかけてきた
《まずいことに、さっきのヘリが俺の雇ったストーカーを攻撃したようだ……まだ息があるなら、助けてくれや》
私としては寄り道などせず、さっさと帰ってシドロビッチの隠れ家で茶の一杯でも馳走して欲しいところだったが
《同業者を見捨てるのは、お前さんも気がひけるだろう? 頼みを聞いてくれたら、勿論、俺も相応の報酬を考えるさ》
私は立ち上がると、PDAに転送された座標を地図で確かめた

「クトー 二 ブーチ? パマギーチェ……」
うめき声が聞こえてきた
二人の男、ストーカーが倒れているが、一人は頭から血を流して事切れていた
私は生きている方の男を仰向けにして、傷の具合を確かめた
破片か何かを腹部に受けていて、出血がひどい
私は医者ではないが、こういう怪我人はゾーンの外の世界で何人か看取ってきた
彼には応急手当とすぐに手術が必要だと思われる
「あ、アンタ……メディキットは持って、ねえか?」
気の毒だが、持ち合わせがない
私にできる一番の「親切」は彼の苦しみを長続きさせないことだが……
目が合ってしまった
この血なまぐさい、ゾーンに似つかわしくない綺麗な瞳をしていた
なんとなく、彼も「やむを得ず」このゾーンに来た、私と同類なのだという気がした
「……相棒は?」
苦しそうに、息をしながら問いかけてくる彼に私は首を振った
「そいつの、バックパックを見てくれ、ないか」
頷いた私は遺体の荷物を開くと、黄色い包装の救急セットがあった
モルヒネの簡易注射器と止血剤や包帯とが中にはあった
私は彼にモルヒネを与えると、腹部の傷を露わにし、水で洗ってから、エピネフリンの止血剤を塗って、たたんだ包帯を傷口のまわりにテープで留めた
腹部に破片か何かが入っているかもしれないが、こんな道端では本格的な処置はできない
モルヒネが効いているのか、彼はぐったりとして私のなすがままだ
彼を担ぐようにして背負うと、歩き出した

シドロビッチの隠れ家の手前に、ルーキーキャンプがある
私が人を担いでその入口に現れると、門番役をしていたストーカーが声を上げて、人手を集めてくれた
助けたストーカーを彼らに託して、私はこのキャンプのリーダー、ウルフと呼ばれるストーカーに礼を言われながらその場を後にした
背後で「この傷じゃすぐに死んじまうよな……」という、誰かの非情な言葉を受けながら

私はシドロビッチの元に戻ってきた
投げつけるように、ジェリーフィッシュを差し出すと、彼はにこりともせずに受け取って、肘をついて言う
「お前さんがどういう男か、だいたい分かったぞ。まずは報酬だ」
シドロビッチは光る妙な粘土の塊のようなアーティファクトを差し出した
「こいつはミートチャンクっつう、結構レアなアーティファクトだ。コイツを使えば、トリックの野郎も助かるかもしれねえな」
私は頷いた
「OK。お前さんはこのゾーンに似合わねえ、良いヤツみたいだ。仕事もできるし、信頼に値する……そういう輩は、早死さえしなけりゃあ、実に良い取引相手なんだ。わかるな? まあ、取り急ぎはそいつでトリックを助けてきな。話はその後でしよう」
私は傷を治すというアーティファクトを手に、ルーキーキャンプへ戻った

先ほどのリーダー、ウルフに取り次いでもらい、彼にミートチャンクをトレーダーから入手した事情を伝えると、すぐにトリックの所に連れて行かれた
衛生担当のストーカーが、ちょうど包帯を換えているところで、私は彼にミートチャンクを差し出した
トリックの横にある、こ汚い皿には体内から摘出したと思しい、血まみれの何かの破片が転がっていた
「これは!? これなら助かる! おい! トリック! 助かるんだぞ、お前さんは!」
ミートチャンクを傷口に押し当てると、少しずつだが、目に見えて出血がおさまっていった
暫くすると、意識を取り戻したトリックが言う
まだ熱が引かないようで、衛生兵には寝ているように怒られながらも、トリックは言う
「……アンタには、礼のしようもない。だけどもう一つ頼みがあるんだ、俺の荷物をシドロビッチのところに届けてくれないか」
私は頷いた
「報酬は、アンタに譲るよ……今の俺には、それしか恩返しができないもんな」
トリックのバックパックには防水加工のされたファイルがあった
彼に見せると「そいつだ、持って行ってくれ……ありがとうよ、兄弟」
私はその小屋から出た
「おい」
ちょうど歩き出したところで、ウルフに呼び止められた
「頼みがある、アンタの用事が終わったら、俺の所を訪ねてくれ……報酬は用意する」

シドロビッチのところに戻ると、私はトリックの代理としてファイルを届けた
「OK。いいだろう……ほら、コイツが報酬だ」
シドロビッチは小さなメモリーカードを差し出した
「コイツにはある情報が入っている、お前さんが欲しがるものだ……今は封鎖されている、CNPPに続く、赤い森の抜け道についてだ。ところでトリックのやつは助かったのか? 俺のミートチャンクのおかげで」
私は顛末を語った
「へえ。それじゃあ、お前さんはウルフたちに貴重なミートチャンクをやっちまったのか! まあ、お前さんに渡したものを、どうしようが勝手だが」
シドロビッチは呆れたのか感心したのか、とにかく骨付きチキンにかじりつく時のような、興奮した面持ちで言った
「さて、今のところの状況確認だが、お前さんと俺の利害は一致している。そうだな?」
私の目的はモノリスの実在の確認と、その位置座標を公表すること
シドロビッチの目的は、閉ざされたCNPPへのルートを開拓すること
「協力しようじゃないか」とシドロビッチは言うと、私に新しい仕事を依頼してきた

アグロプロムという地域の廃校に、ウクライナ軍が最近駐屯しいているという
トリックと死んだ彼の相棒は、そこへ偵察に出かけたそうだ
彼らが持ち帰った情報によると、その廃校に駐屯している軍はゾーンで秘密裏に行われていてた、研究情報の収集と分析をしているのだという
頻繁な人と車両の出入りが、トリックの偵察記録に記されていた

そこに忍び込んで、記録を回収し、デューティ派閥が支配している酒場の主人兼トレーダーに情報を渡すこと……内容を要約するとこういうことだった
「ここに戻って来られないから、報酬は先に渡す……こいつだ」
シドロビッチはそう言うと、アーティファクトを取り出した
「アーチンっつうんだが、これは優れものだぜ、放射線をかなりカットしてくれる。噂じゃ、ヤンターの科学者がムーンライトと併せて血眼になって、これを探しているっていうくらいにはレアなもんだぜ……普通の人間が避けるルートも関係なくなる、お前さんの仕事の役にも立つだろうよ」
私はアーティファクトを受け取ると、踵を返した
「グッドハンティング、ストーカー」
お定まりの挨拶を背に受けながら、私は外に出た

さて、次はウルフの話を聞きに行かなければ……

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