マージナル・オペレーション

“お話” を読むときに、自分は何に重きを置いているかを考えて見ると「リアルっぽさ」が挙げられる。
あくまで「っぽさ」である。徹底してリアル=写実的な描写が続くと大抵冗長で退屈な記述が増える事になるし、かといってリアルさを感じられないと嫌な意味でのファンタジー、ご都合主義の塊の様に感じられてしまう。
(逆にドキュメンタリーやルポタージュ的なものを読む場合は、日常生活の中では知り得ない別世界の日常として、些細な部分の写実的な描写が楽しかったりする…まぁ結局ある作品を目の前にした時、そこに何を期待しているか、の話ではある。お話においては「リアルっぽさ」を期待しているという訳だ)
この「リアルっぽさ」のさじ加減が自分の感覚にあった作品はとてもハマり込むし “面白い”。
この『マージナル・オペレーション』はまさにそんな漫画だった。

あらすじ / マージナル・オペレーション – Wikipedia

あらすじ / マージナル・オペレーション – Wikipedia

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2020年代前半頃の物語。失業し、いわゆるニートとなっていた新田良太は、偶然ネットで見かけた民間軍事会社の求人に応募し採用される。 わざわざ海外まで出張って受ける研修は、戦術シミュレーションゲームのような内容だった。 元々高いスキルのゲーマーだったこともあり、高い適性を示してコンピューターゲームの感覚で次々に業務をこなす。 やがて、新田は業務の過程で戦争の様々な現実に直面し、その都度苦悩しながらも決断していく。 人間個人が望み得る程度の、より良き未来のために。

面白いなーと思ったのは、ニートゲーマーが活躍できる舞台として、iイルミネーター (インフォメーションイルミネーター) という機材を用意し、現実の戦闘をゲームの様に表してしまったところ。
GPS付きヘッドセットを利用し俯瞰型RTSの様な画面を構成、Battle Field 4の指揮官モードの様に戦術指示だ!と、なんとな~く「ありそう」な機器を用意して、そこに主人公を当て込んでいる。
実際主人公の新田も、それを本当の戦闘だとは思っておらず、だから本来のゲーマー由縁の能力を発揮出来る。
元々ゲームで培ってきた経験に加えて、”本当の戦闘” だと思っていないからこそ出来る事…様々な戦術を試す・パターンシミュレーションをして経験値をためる事が出来た。

そんな “なんかありえそう” な設定を入り口に持ってきている事で、実は全て実戦だったという事を知った主人公の衝撃と葛藤や、その後の「皆を死なせない為に」と爆発的な才能開花を見せるところに違和感なく入っていける。
唐突だけれどガンダムも同じ様なもんだよなーと思った。「こいつ…動くぞ!」とマニュアル片手の操縦から始まり電撃鞭のグフに苦戦していた少年が、幾らかの実戦を経て驚く程の短期間で12機のリックドムを3分足らずで全滅させる成長を見せるファンタジー。
ガンダムとニュータイプ、iイルミネーターとゲーム特化のニート。

そんな感じで、全体的に「なんとなーくリアルっぽい」雰囲気を醸し出しているのだ。
繰り返すけれど、大事な事は「リアルである」事じゃなくて「リアルっぽい」事。

就職先は戦術オペレーター、だからそれに必要な英語だけ丸暗記で叩き込まれる描写がある事。
それ以上の会話を覚えるのは業務を叩き込まれる会社ではなく、現地の風俗店からである事。
覚えた英語で買い物が出来る喜びだったり楽しみだったり。

なんかそういう「リアルっぽい」様に感じさせられる描写を適当に端折りつつ (読みやすい形で) 入り口に展開している事で、その後のいろいろもなんとなーく「そういうものかー」と受け入れやすくなる巧いバランス。
いわゆる「掴み」の一種というのか。「その世界観」を受け入れさせる為の常套手段ではあるものの、そこに結構なページ数割いて描いているのが構成のバランスとして面白いなぁ、と思った。

まぁ逆にそうやってページ数割いてるからこそ気になる部分、今改めて考えるとそれなりにある。
fughseくんのマージナル・オペレーションのレビューでも上がっていた「英語以外の他言語は?」という点 (英語話せなさそうな現地部族の族長と英語で会話してる…?) もそうだし、個人的には新田の能力はiイルミネーターとセットで発揮されるんじゃないの?という点。
彼のレビューで「主人公の最大の能力は戦場を俯瞰できる視野の広さ」というのが上がっているけれど、序盤の描き方を観ていると、その担保としてiイルミネーターがあるんじゃないの?と感じさせられるんだよね。
iイルミネーターのあるオペレーションルームから離れたところで襲撃に遭う場面があるのだけれど、彼は頭の中で周辺地図を展開し敵味方を配置し脳内iイルミネーターよろしく指揮を執る。
さっきのガンダムの話でいうと、ガンダムから降りたアムロがフェンシングでシャアを圧倒してしまう様な、そんな感じ。
最終的にiイルミネーターなしで的確な指揮を執れる様な成長をしても良い、とは思うけれど、個人的にはちょっと早過ぎるタイミングかな、という印象を受けた。
その印象を引きずって、iイルミネーターなしで話が進む日本編は何かこう物足りなさを感じたりもした。

とは言え、読んでいる最中は言うほどその点が気にならなかったりしたのも事実。
「そういうものかー」で受け入れやすくなっているところに、相次ぐ事件で熱い展開が続くので引き込まれてしまう。
フォーカスされているのが “リアルっぽい” 戦術であって、戦争そのものではないのも良いのかも知れない。
また、主人公新田の、「人間個人が望み得る程度の、より良き未来のため」の小さい規模の話に納めているのも良いのかも知れない。
危ういけれど巧いです。

最後に、実はこの漫画の原作者さんは大好きなゲームのデザイナーさんであったりもする。
『高機動幻想ガンパレード・マーチ』、宇宙人の侵略を受けている地球を防衛する学徒兵の一人として、ロボット操縦士になってみたり指揮官になってみたり、もしくは無職の遊び人として他のAIキャラクター達との群像劇を演じるゲーム、とでも言えば良いのか。
ものすごい端的に言うとエヴァ的世界観の中で自由に行動出来るゲーム、ついでにNPCはパラメータを基準に行動し、そのパラメータはプレイヤーの干渉によって増減する。
実際に活きた世界に干渉しているかの様な気分を味わえる斬新なゲームだった。
(実際このゲームのシステムを改変したエヴァのゲームが公式に出たりしている…そちらは正直微妙な出来)
このゲームのデザイナーである芝村裕吏さんの小説が『マージナル・オペレーション』で、それを原作としてこの漫画版マージナル・オペレーションがある。

ガンパレの世界観やテキスト、話作りは厨二感強過ぎでイライラする部分がありつつも、妙に力強く、気持ちを煽られる部分があるんだよね。
演出が巧いんだ、随所随所の盛り上げ方がとても巧い。
ゲームの戦闘中 (余談だけれどiイルミネーターの画面と雰囲気がよく似ている戦闘オペレーション画面で、敵の行動パターンを考えて先読で行動を取らせたりと戦闘システムの部分だけ取り出しても結構楽しい) に行軍歌が唄われる場面があるんだけれど、かなり胸が熱くなる。
マージナル・オペレーションにも似た部分を感じて、読んでいてやたらと気持ちが高揚する部分があった。
他者の描く漫画でもそれを感じさせられる訳で、原作の小説もちょっと気になるなぁ、機会を観て読んでみよう。

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