最短距離を突っ走れ。 ― Second Life

さて、という訳で前回の続き
Second Lifeに興味がある友人を案内したところ、主としてUIが受け付けないというところでの拒否反応があった。

その際に彼が言った言葉、「これに金払うユーザーが悪いんだ!」を聞いていろいろ考えてしまい面白かった。
この「いろいろと考えてしまった」部分について、ちょっと掘り下げて。

ここ数年で急にUIの重要性についていろいろと語られる機会が増えてきた。
多分スマートフォンの普及が一番大きい要因なんだろうね。
スマートフォンによって、本来の意味で「コンピュータが生活に浸透した」んだと思う。
だから、文化圏と言葉を超えて、誰でも使えて分かりやすいUIとユニバーサルデザインの重要性が見直される様になった側面は少なからずあるのかなと。

実際分かりやすいUIは大事だ。
例えば、玄関の鍵を寄せ木細工のパズルにする人はいない。
鍵を差し込んで回すなり、カードリーダーを通すなり、触ったり覗き込んだりの生体認証を使うなり、何にしろそこに学習コストが必要とされる様なインターフェースが必要とされる事はない。
何故かと言えば不便だから。
時間のない朝大急ぎで出掛けたいのに玄関の開け閉めに10分も20分も時間取られたらやってられないから。

冒頭のスマートフォンもそうだよね。
今日の午後の天気を調べるのに、あっちタッチしてこっちのスイッチ入れてこのメニューを開いて…なんてやらせる様なものを使おうとは思わない。
ブラウザを開いて「天気」と検索ワードを入れるのすらしたくない。
「天気」アプリをタッチして出てきた画面を見る。
人によってはガジェットとして設定して、画面スリープから復帰するだけで分かるようにすら。
複雑な操作を必要とする天気アプリがあったとしても、多分それは誰も使わない。

目的が明確な場合、その目的に最短距離で到達出来るのが一番良い訳だ。

じゃあ目的が複数ある場合はどうなるか。
前述の天気アプリで考えた場合、少し操作は込み入ったものになる。
「現在地の天気」は、スマートフォンのGPSとモバイルネットワークから取得された位置情報を元に自動的に表示してくれる。
それ以外の天気を調べたい場合は、メニューを開き、検索欄に文字を打ち込み、絞り込まれた候補から自分の知りたい場所にもっとも近い候補を見つけ出し表示する必要がある。
複数の場所が知りたければ、その数だけ前述の様な操作が必要になる。
そういったことが面倒くさい人の為に、最近は音声入力によって検索したり出来る様になったりもしたけれど、意外とその機能を知らない人は多い。
何にしろ、最初の目的に比べて学習コストと手順が必要とされる。

じゃあ全く違った目的の場合はどうか。
写真を撮ったので格好良くフィルタをかけよう。
さあ天気アプリを開こう。
どうしようもないね。

そこで必要とされるのは目的に適ったアプリケーションであって、それは全くUIの異なるものだ。
例えばSnapseedを使えば比較的簡単に格好良いビジュアルに仕立て上げられる。
でもそれで出来る事にも限界があって、更にこだわりを追求しようとしたら、今度はパソコンを立ち上げてPhotoshopを開く訳だ。

そして大抵の場合、そこで試行錯誤する。
頭の中でイメージしたものを具現化する為の調整を重ねる。
場合によっては、そのイメージはかなり曖昧なものだったりもするから、そうすると具現化されたものを観ながらイメージを固めていく事もある。
それに必要な学習コストは、天気を調べるのと比べれば膨大なものとなる。

つまり言いたい事はさ。
目的が増えたり高度になればなるほどUIは複雑化し、そして学習コストが必要とされるケースが多い、という話。
ユニバーサルデザインであるとか、分かりやすいUIであるに越した事はないけれど、イコール学習コストは不必要なのか、というとそんな事はない。
そして、万人が等しく触れて扱える領域には限界がある。
Second LifeのUIは確かに優れているとは言い難いけれど、ここでそれぞれが目的とするものの幅を考えると、それは仕方の無い部分があるのかなと。

チャットを楽しみたいだけの人もいれば、キャラクターをカスタマイズしたい人もいる。
景観の作成をしたい人もいて、更にその「景観」も、テーブルの上を作り込みたい人から地形景観を作り込みたい人まで規模の幅も大きい。
キャラクターのカスタマイズや景観部品 (鉛筆の様な小さなものから家具、草木に建物、更には山や川、洞窟まで) の作成をしたい人もいる。
更にはスクリプトを組んで、Second Lifeという世界の中に独自のゲームを作り出したい人もいる。

world's end

そういった多様な目的を汎用的に扱えるUIとして、Second LifeのUIがある。
だからどうしても複雑化してしまうし、受け付けない人は受け付けないと思う。
特に目的を持てない人や、汎用性の意味を見いだせない人にとっては、ただただ凡雑なものでしかないだろうね。
勿論「ここがこうだったらなぁ」と思う部分もあるから、「これに金を払うユーザーが悪い」という部分を否定は出来ない、そういう側面もある。
特に今回のケースがまさにそうだけれど、入り口のところからいきなり複雑なUIの世界に放り出されるのでちょっと辛いよなぁ、と。
例えば俺は「仮想世界」という概念自体が面白くて、手探りで操作から制作まで覚えるのがとても楽しかったけれど、今回なんかは「制作とエロ」と目的が明確だったので、もうちょっと違った形での案内の仕方もあったかなーと、その辺は反省。

ただ、古くさいから糞とか、ユーザーが甘やかしているからこんななんだ、というのはちょっと違うよなーとも思う。
2003年からのリリース以後、古い仕様を引きずりつつも新しい機能も増え、複雑さを増しつつも存続するサービスであり、また未だに世界的にユーザーはいて (世界的だから時間帯も溜まる場所もまちまちで、実感はなかなか得られないけれど)、新規にはじめるユーザーや、休止中から復帰するユーザーもいる。
それは、多分Second Lifeのゲストではなくキャストだからなんだろうなぁ、と思う。
何故複雑なUIなのか、それが持つ意味と、その汎用性を見出せているんだろう、と。

という訳で、次回はその辺りの事について。

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