右手の薬指。
14日、土曜日の話。
やかん、優樹と一緒に、なまこの家へ。
お線香を供え、なまこの両親と30分位かなぁ、彼の思い出話をした。
その後、彼の部屋を見せてもらう。
俺は今日の2人に先駆け、彼の死去を知った月曜日に一度来ていた
「あいつの部屋本当やばいから。無茶苦茶格好良いよ、まじで呼べよなぁ」なんて話を事前にしてたんだけれど、それでもなまこの部屋に入った2人はかなり驚いていた。
壁と天井が抜かれて広々とした部屋で。
抜いただけではなく改めて木材張り直されていて、シックで落ち着いた質感が作られている。
家具も一つ一つ厳選したのが分かる統一感で。
天井は樹の枝を模したオブジェがバランス良く広げられていて、ぶら下がる照明とケーブルがとても幻想的な雰囲気を作っていて。
思わず自分の事の様に彼等に自慢してしまった。
なまこのお母さんから是非形見分けで何か、と伝えられて、皆で部屋を見て回る。
「お、○○(漫画)ちゃんとおさえてるね、流石」とか「あー××(ゲーム)やってたかぁ」なんて言いながら。
何となく彼の机に腰掛けて、パソコンモニタを眺める。
最近はここで何してたのかなぁ。
丁度、何かやろうぜって話をやかんとしたばかりなんだよ。
で、君にメールしても返信ないんだ。
まぁいつもの事でパッと受信見て、そのまま返信忘れてんだろ、って思ってたんだよ。
Torchlight2やりかけじゃん?
Skype立ち上げるからさぁ、続きやろうぜ。
なんて事を、”彼の机に向かって” 考えている事実に気付いて、涙が止まらなくなった。
ふと顔をあげたら、小さな小皿にアクセサリが入っているのを見つけた。
彼がいつも身につけていたリングとネックレスだった。
やかんと優樹に声を掛け、その中から1つづつ、形見分けを頂く事にした。
ご両親にアクセサリを頂く事と、ちょっとした思い出を、それぞれが伝えた。
「皆は身体に気をつけて、親より先に死んじゃ駄目よ」と、お母さんが冗談っぽく笑った。
亡くなって5ヶ月。
ご両親もまだ悲しみを乗り越え切っていないのが立ち振る舞いの端々から感じる。
その言葉はとても深く深く響いた。
形見の指輪は、右手の薬指にぴったりのサイズだった。